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それはハヅキお兄ちゃんがこの世にいなくなってから

    突然の如く始まった日常の物語・・・


月星お姉ちゃんと12人の妹達
〜茫然自失〜

作者 月星さん


 

「姉くん・・・・ショックなのは分かる・・・・・だが私達には・・・・
・・姉くんが・・・必要なんだ・・・」
状況を整理し切れていない私は、そんな言葉さえも聞こえてはいなかった。
一体ここは??この娘達は誰??私はどうなるの??そればっかりが頭をリピートしていた・・・。
「とにかく・・・ここで話してても・・・しょうがない・・・部屋に入ろうか・・・」
「何、あんたが仕切ってんのよ!千影」
そんな会話が聞こえてきたように聞こえたが、私は言われるがまま、家の中へと入っていった。



「さてと、じゃあ簡単な自己紹介から始めましょうか??」
ツインテールが自慢の亜麻色の髪の彼女が私の方を見て“千影”といった娘に言い放つ。
「千影、あんたもしかして知ってた??お兄様の魂がこの人の体にあるってこと!」
「・・・・姉くんの魂に・・・気付いたのは・・・最後の仕上げを始める前さ・・・・
・・・知らないのも同然だよ・・・・」
「そう??」
最後の仕上げって何だよ??私は料理の食材じゃないぞ・・・。
というか、私に妹なんかいない!!
私は顔面蒼白になりながらも彼女達の話に耳を傾けた。




「名前は『月星サン』デスね!!趣味はなんデスか?特技は?」
一息ついたと思えたら、自己紹介とやらがまだだった。
栗色の髪、手にはルーペ、特徴的な八重歯。私が黙ったまま見ていると、彼女は更に続けた。
「誕生日はいつデスか?星座もチェキデス!!」
「四葉くん・・・1つ確かめておきたいことがあるんだが・・・・」


確かめておきたいもの・・・。それはどうやら彼女達の兄についてのことらしい。
話を聞くと事故で亡くなった彼女達の兄(ハヅキっていう)は私の魂と同化しているとのこと。
そのハヅキの記憶があるかどうか・・・。簡単に言えばそんな所だ。
だけど私は本当のことは言えなかった。ここは二次元の世界で、私は三次元の人間・・・。
故に、彼女達のことも知っていた。彼女達はシスプリの妹達・・・。
嘘は嫌いだが、ここは記憶があると言うしかなかった。



「じゃ、『お姉ちゃん』って呼んでいいですか??」
「あー!!花穂も!花穂も!お姉ちゃまって呼ぶね」
「ボクも!あ、あねぇ・・・よろしく!!」
「お姉様、よろしくお願いするわ」
「よろしくね!おねえたま♪」
「姉上様・・・。よろしくお願いいたします」
「ねえさま!料理は姫にお任せですの♪」
「ア・ネ・キ!!資金援助なんだけど〜・・・」
「姉くん・・・これからもよろしく・・・お願いするよ・・・」
「姉君さまはワタクシがお守りしますわv」
「チェキデス!!姉チャマ!」
「姉や・・・よろしくお願いします」



予想以上だ・・・。ブラコンからシスコンになっちゃった(笑)
いや、笑いごとじゃないけど・・・。
私はふと思い立ったので、12人の妹達に言ってみた。
「あ、あのさ。私、君達のこと知ってるわけだし、自己紹介はいいんじゃない??」
「でも、姉チャマのチェキはまだ終わってマセン!!さっき四葉が言ったこと、教えてクダサイ!!」
「まあ、それだけならね。9/7生まれ、乙女座、趣味はゲーム、PCいじり、特技はキャラの声マネ」
「ふむふむ・・・。なるほどデス。チェキ!!」
「・・・この家って誰の??」
私は家の中を見渡しながら、私は誰とはなく聞いてみた。
「お姉様・・・?」
あ・・・。やばかったかな??もしかしたら自分んちだったり。でもそんなん知らないしなぁ・・・。
「姉くんは・・・・・完全に記憶が残ってるというのは・・・・ないみたいだ・・・・
現に・・・自分の家を・・・・忘れている・・・・」
「そうなんだ・・・。なんか可哀想だな、あねぇ」
尤もだ!!でもここは千影に感謝しとかないと・・・。
でも・・・。この娘達、このままでいいのかな・・・???







やがて、日が暮れて来たので今日は一旦、皆帰ることになった。
にしても今日からここに1人で住めってか??
冗談きつすぎ!!一緒にこっちへ来た私の荷物も片さなきゃだし。踏んだり蹴ったりだよ・・・。
「・・・。ねぇ!白雪ちゃん!!ちょっと!」
私は帰ろうとしている白雪を呼び止めてこう言った。
「お願いがあんだけど。『料理は姫にお任せですの♪』って言ってたからさ、晩御飯作ってってよ!」
「いいですの♪ねえさまが頼んでるんですから」
こうして私は、まんまと飯炊き係??をGETして喜んでいると、他の妹達が話に割り込んできた。
「ずるい!!白雪ちゃんだけー!!」
そう次々に言われたもんだから堪ったもんじゃない。また私が困り果てている時、
「・・・姉くん・・・もしかしたら君は・・・・」
魔術書を片手に読んでいた千影に言われたのだ。



「もう・・・『月星』としての記憶しか・・・・・ないのではないか」



確信をつくの上手いな、この娘は。そうだよ、その通りだよ!!
私は『ハヅキ』なんてヤツ知らねーよ。てか知りたくもねー。
早く自分の世界に帰りたいのに、わらわらと妹が来たもんだから
対応にも困ってる所だし。この家の部屋は和室ないし・・・。
なんて私が思っていると、妹達が何か言っているのが聞こえてきた。
(多分さっきから言ってたんだろーけど、聞く耳がなかっただけ)




「お姉ちゃん、それは・・・本当ですか??」
「お姉ちゃま??」
「あねぇ!嘘だよね!!」
「お姉様!ホントのこと言って・・・」
「おねえたま?ヒナのこと分からないの?」
「姉上様がわたくしのことを憶えてくれてないかも知れないなんて」
「ねえさま・・・?姫の特製料理のお味もお忘れになっちゃんですの?」
「アネキ!!資金援助・・・してくれるよね?」
「・・・・・・・・姉くん・・・・・・・やはり・・・・」
「姉君さま!記憶がなくてもワタクシ、貴方をお守りいたしますから」
「姉チャマのチェキ・・・えっと〜四葉、理由がどうであれチェキは止めマセン」
「姉や・・・いないの」




さて、どう答えるのが筋だろう?私の頭には答えは出ている。
皆さんの頭には・・・??なんて言ってる私は余裕者なのか(爆)
大体、千影に知られたトコロで終わってるんだ。敵に回したくないし。




「悪いね、ホントだよ。君達のことは知ってるけど、ただそれだけ」




私は床に散らばっている荷物の中の、ある物が目に飛び込んで来た。
・・・同人誌。Σ(°д°)しかも18禁が一番上かよ・・・。
足で後ろに弾いて彼女達に見られないようにしながら
マンガの山に埋めることに成功・・・。


妹達はただただ、私の言葉に茫然としているだけだった。







それが私と妹達との奇妙な生活の始まりだった。
                                           続                      



 


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