▽BACK▽  ▽OTHER▽  ▽NEXT▽

 それはハヅキお兄ちゃんがこの世にいなくなってから
  突然の如く始まった日常の物語・・・

 


月星お姉ちゃんと12人の妹達
〜月星光臨〜

作者 月星さん


もう『ハヅキ』という人物がいなくなって一週間が過ぎた。
今日は妹達全員で兄の遺品を整理していた・・・。
「でも人を助けようとして死んじゃったんだから、これっていい事なんだよね」
涙を堪えながら兄の持ち物に目をやる衛をよそに、花穂はただ泣き崩れるばかり。
「だ、だめデス!!花穂ちゃん・・・。泣いては・・・兄チャマ・・が悲し・・むだけ・・デスーーー!!」
今まで溜まってたものを吐き出さんばかりに、四葉が泣き出してしまう。
それを見ていた年少組の雛子や亞里亞も目を真っ赤にして兄の私物を見ていた。
終始、泣いていた妹達だったがある一言によって、表情を一変した。



「・・・・実は兄くんは・・・・別の世界に魂が・・・・飛ばされてしまったらしい・・・
もちろん肉体は滅びてしまったのは事実だが・・・・」
という千影の言葉だった。
「何それ?千影!!どういうこと??」
真っ先に飛びついたのは咲耶だった。しかし、気になるのは皆、同じ事。
「じゃあアニキは生きてるってこと??」
「でも、どうして分かったのですか?」
鈴凛と鞠絵が言うなかで、千影は微笑した。
「・・・・君達が望むなら・・・・兄くんの魂が生きている人物を・・・・
ここに呼び寄せる事が出来るが・・・・どうだい?」
千影は言い終わると、皆を見回した。


「可憐、お兄ちゃんが生きているならもう一度会いたい!!」
「花穂も!!花穂のお兄ちゃまは世界でただ1人だもん」
「ボクだって同じだよ。あにぃあってのボクだから」
「私、考えてみたらお兄様とデートすらしたことないままだったのよね」
「おにいたまが来てくれるんだったら、ヒナ、何だってやっちゃうよ!」
「もう一度、兄上様と話がしたい。それだけです」
「にいさまが生き返ってくれたら、姫特製料理を食べさせてあげるんですの」
「やっぱりアニキがいないとね!!資金援助出来ないし」
「兄君さまを今度こそお守りしたい!絶対に・・・」
「兄チャマのチェキはまだまだこれからだったんデス!!いなくなったらだめデス」
「兄や・・・、帰ってきてください・・・」

それぞれの反応は様々だったが、千影は納得してこう続けた。
「・・・・分かった・・・・やってみよう・・・・だが・・・
これはかなり・・・・厄介なものだ・・・多少時間が掛かるかも・・・・
知れないが・・・・」
得意の魔術関係の本を手に11人に言い聞かせる千影。
「それってどれくらいよ!?そもそもなんでお兄様の魂が別の世界に飛ばされたって分かるのよ??」
咲耶は千影を見ながら言い放った。
「・・・フッ・・・・簡単なことだよ・・・咲耶くん・・・・君達が兄くんの遺品を整理してた合間に
・・・・・兄くんの遺品に宿っていた精霊達から・・・話を聞いたんだ・・・・
『兄くんの魂はもう別の世界の精霊が持っていった跡』だとね・・・・今はもう・・・その世界の体に・・・・
馴染んでいるようだが・・・・だから・・・呼び寄せるには・・・時間が掛かる・・・・
こちらの世界で言うと・・・・・約一時間三十分ってところか・・・・」
「・・・・こちらの世界って何よ」
「あまり突っ込まない方がよろしいのでは?」
「それもそうね・・・」
咲耶と春歌が呟くなか、千影は早速準備に取り掛かっていた。





「今、不思議に思ったんデスが・・・」
ふと四葉が口を開いた。時間は午後三時を回ろうとしていた。
「どうしたの?四葉ちゃん??」
寝てしまった雛子と亞里亞のそばを離れて可憐が尋ねてきた。
「それはデスね・・・。兄チャマが戻ってきた時のことを考えてたんデス」
「アニキの??」
鈴凛も興味ありげに耳を傾けた。
「はいデス!!兄チャマは戻ってきた時、四葉たちのことをちゃんと覚えているデショウか?」
「きっと大丈夫ですの!!にいさまは姫たちのこと覚えているんですの」
傍らで聞いていた白雪はそう言うと、『アフタヌーン・ティーの時間ですの』
と言って兄の家のキッチンへ入っていった。




しばし白雪の淹れたお茶でくつろぐ姉妹・・・。その中には千影の姿もあった。

「・・・・やはり・・・一息入れると・・・・気分が違うな・・・・」
「ねぇ千影ちゃん、準備の方はどうなの??」
花穂がおもむろに話題を切り出す。
「あっそれ、ボクも気になってたんだ!!なんか見る限り全然進んでない気がするんだけど」
そうなのである。衛の言うとおり、大きな魔方陣??が形どられているだけであって
人を呼び寄せるにはいくら千影でも無理があるんじゃ・・・とここにいる皆は考えている。
「・・・あれは・・・・まだ・・・・完成はしていない・・・・兄くんがいる世界の場所と
・・・・・・この場所を結ぶ・・・・・古代魔術文字で覆って・・・・初めて完成するんだ・・・・」
要するに『古代魔術文字』とやらがまだ書けていないらしい・・・。
「善は急げよ!!早くその何とか文字っての、書いちゃってよ」
咲耶が促すが、千影は全く聞く耳持たず、といった風で
「・・・・咲耶くん・・・そんなに急ぐと・・・・幸せが逃げるよ・・・それに・・・・
あの文字は・・・・まだ書く時じゃない・・・・・」
「それじゃ、いつなのよ〜!!」
声が大きかった為、寝ていた雛子と亞里亞が起きてしまった。
2人ともキョトンとしてまだ完全に目が覚めていない。
「ありりり??ヒナ、どうしたんだっけ??」
「亞里亞、まだ眠いです・・・」
千影はやれやれといった具合で、時計をチラッと見ると、未だ納得していない
咲耶に向かってため息混じりに呟いた。
「・・・咲耶くん・・・先ほども言ったが・・・・この術は厄介なものだ・・・・
古代魔術文字で覆う前に・・・精霊達を・・・・集めなければならない
・・・・・それに時間が掛かる・・・・そう・・・一時間三十分ほど・・・・」



魔方陣が完成してからすでに一時間近く経っている。
故にあと三十分で『兄』の魂がこの場所に呼び寄せられるということ。
皆、それぞれの思いを胸にその三十分を過ごした。














一方、こちらは『別の世界』

SSのネタも切れ、目が疲れた私は少し休もうと布団に横になった。
どれくらい寝たであろうか・・・。目覚めの悪い夢を見て気分を悪くした私は
布団の中でネタを考えることにしたのだが、どうやら二度寝をしてしまったらしい。
その夢は今でもはっきり憶えている。12人の女の子達が私と遊んでいるらしい夢・・・。
「ん!?待ってよ!!12人ってシ○プリじゃあるまいし」
私は起き上がるなり、そんな言葉を発しながら眼鏡を取ると、一冊のマンガ本を手にした。
「今日はもうダメだな・・・。マンガでも読んで、またネタが浮かべばいいけど」
マンガを読み始めた月星は誰にも止められない(笑)
すでに読み終えているマンガとはいえ、一巻を早々に読み終えて、ただいま二巻を読んでいる。
「ていうか・・・。これで終わりなんだよね、もうちょっと長いやつ読めばよかったかな??」
そんな独り言を言いながら、月星はマンガを読み終えるとまた暇を持て余してしまった。
「・・・・・・」
月星は何気なくPHSをいじっていた。メールでも打とう・・・そう思ったのかもしれない。













こちらの世界・・・

「さあ・・・・書けたよ・・・・」
一時間三十分が経った今、古代魔術文字が書かれた魔方陣が12人の目の前で
怪しい光を放って不気味に佇む。その光はまるでこの世とあの世を結ぶような、なんとも言えがたいものがあった。
「こ、これでどうするの??」
「花穂、何だか怖いよ〜」
「やっと、お兄様が出て来てくれるのね!!」
「・・・・始めるよ・・・魔方陣から・・・離れていた方がいい・・・・・」
千影はそう言うと、11人を魔方陣から遠ざけ、訳の分からない言葉を唱えながら
魔方陣に念を送り続けた。その時間約五分だったであろうか・・・。
「・・・これでもうじき・・・・兄くんの魂が入った人物が・・・・やってくる・・・」










「な、何だ??」
月星はいきなりの異変に思わず声を上げてしまった。メール送信が完了して安心しきってる所で
大きな地震を感じたからだ。しかし、月星はすぐに元に戻るだろうと気にも留めていなかった。
「・・・結構続いてるなぁ。それになんか変な感じ!ただの地震だよね・・・」
だんだん不安になってきた月星はTVのニュースを確認しようと思い立ち、TVに近づいたその時だった。
「ーーーーーーーーー!!!!」
月星と月星の持ち物全てが謎の光に包まれたかと思うと、一瞬にして月星は消えてしまったのだ・・・。









「・・・・来たよ・・・・兄くんの・・・・魂を持つ人物が・・・・」
その言葉を聞いた11人は魔法陣の前に集まってきた。
            
             ドサッ!!

「痛って・・。一体、何がどうなって・・・」
そこに現れたのは月星だった。周りには彼女の持ち物が散乱している。
「おねえたま・・・だあれ??」
雛子がおそるおそる口を開いて月星に問いかけた。
辺りを見ていた月星は、やがてその光景がどこかで見た感情に
似ていることを思い出す。
「夢・・・。そう、これは夢・・・。でも夢ならなんでさっき痛かったんだ?」
そんなことを1人でブツブツ言っていると、月星はまた名前を訊かれた。
「あの、貴方の名前ってなんていうんですか??・・・もしかしてハヅキさんとか」
訊いてきたのは咲耶だった。他にも訊きたいことは山ほどあるような顔だったが、
とりあえず彼女の質問に答えた月星。
「・・・月星っていうっす。一応・・・」






これが月星お姉ちゃんとの出会いだったの。

              続                      

 


月星さんへの感想はこちら
NBK10812@nifty.com
▽BACK▽  ▽OTHER▽  ▽NEXT▽

SEO対策 ショッピングカート レンタルサーバー /テキスト広告 アクセス解析 無料ホームページ 掲示板 ブログ