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「兄やさま、今日はどちらにいらっしゃいましたか?」
マリアの世話をしていたリビングからエントランスに出ると、亞里亞のところのメイド長(亞里亞曰く、じいや)さんがいきなり不躾な質問をぶつけてくる。
「?? まるで警察の職務質問みたいですね。」
「!! もうしわけございません。実は・・・」


私と妹たちの子育て日記 Last Day

作者 James Bartonさん


「お兄様がノゾキー!!」
咲耶、マリアが起きるって・・・
ここから3キロほど離れた本家、咲耶にとって、本来の自宅というべき屋敷で、メイドさんたちに与えられた自室をのぞく影があったらしい。
「しかし・・・この屋敷に居てさらに?」

「はぁ、まぁ、そう思うのですが・・・」
あ、いや。そんな風に同情されても・・・


私の夜のせいかつ・・・もとい。夕食後の我が家の光景なのだが・・・
まあ、12人の女の子がお風呂に入るとなると、けっこうな騒ぎになる。たとえば・・・
お風呂からあがった雛子が裸のまま駆けずり回る。
それを追って、 亞里亞も裸のまま駆けずり回る。
まぁ、ここまでは可愛いものだ。

「お兄ちゃまー、花穂、パジャマをお部屋に忘れちゃったよー」

で、バスタオル1枚の花穂が私の前で転ぶ。
当然、バスタオルがはだけ、花穂の・・・いわゆる、おしりの2つのおまんじゅうがあらわになる。
目がいくことに関しては、攻めないでほしい。あれで、最近、胸とおしりが・・・あ、いや、なんでもない・・・
でも、ここまでは、まだ不可抗力というヤツ。

「お・に・い・さ・ま、私のショーツ取ってくださらない?」

咲耶が、見事なまでのプロポーションを誇る裸体を包んでいるのは・・・
バスタオル・・・ではない・・・プール用の・・・バスタオルの半分くらいしかないタオル・・・
全然隠れてないし・・・っていうか、なぜ家の中でそれをつかう?

「咲耶さん!!兄君さまの前ではしたない!!」

とかいう春歌も浴衣の帯を結んでいない・・・
忘れているだけ・・・と信じたい・・・ま、これはこれで・・・いやいや。

しかし、ここ最近で1番強烈なのは・・・可憐だな・・・
3日前の雨の日に、猫なのに濡れ鼠で帰ってきたバニラを、

「さぁ、可憐と一緒にお風呂にはいりましょうねぇ。」

と、風呂場に連れて行き・・・いや、バニラになりたかったわけでは・・・あるけど・・・

5分後・・・

「ああん、バニラ、まだ、お風呂から でちゃダメ!!」
ボディソープを撒き散らし、弾む白黒2色の毬。
ボディソープを撒き散らし、毬を追うベビーピンクのぴっかぴかの裸体。

「ぶっっ、可憐!!バスタオルくらい・・・」
巻け!!と声をかける暇こそあれ・・・

こちらにダッシュをかけ私の顔に張り付く毬、いや、バニラ。それを追う第二陣。
勢いが止まるはずもなく、可憐が私の上に飛び込んでくる。
うおう、体が感じる、おんなのこの体重・・・ちょっと待て、可憐!!
あ、なんか、おなかの上にシアワセがダブルでのっかている、この感覚!!
ああ!!理性がああああぁ 理性がああああああぁあああぁぁぁ・・・

途切れることはなかった。

「お兄様、今の音は何!!」
「兄君さま!!今の物音は!!曲者ですか!!」
「あにぃ!!何があったの!!」
「兄くん………魔物でも………出たのかい?」

第三陣、到着・・・
われに返り、自分が一糸まとわぬ姿であることに気づいた可憐は、毬をつかんで、風呂に入りなおしにいった。
残された私は、ハリのむしろ・・・可憐が風呂からでてくるまで、ばっちり吊るし上げをくらっていた。
このときほど、女の子の長湯が恨めしかったことはない。

こんな、男として幸せ・・・なんだか・・・蛇の生殺しなんだか・・・の日々を送っていて・・・
さらに・・・他の女性にまでちょっかいを(この場合はノゾキ)かけにいくのか・・・
私もタフだな。もし、ほんとなら・・・


「私というものがありながら、お兄様がそんなことをするはずがないわ!!」

いや、確かにそのとおりだが・・・なんか、誤解を招く言い方だな、咲耶。

「はい、存じております。」
納得されてるし・・・

「しかし、目撃証言が複数ある以上。無視するわけにも参りません。」
と、いいながら、亞里亞のところのメイド長は、私の顔・・・いや、髪に目をやる。

「つまり、そのノゾキ魔は、長い紅い髪を後ろでひとつにまとめていた・・・と」
「・・・はい」
「まいったな、しばらくは、アリバイのある生活をしなければならないのか・・・」
と、つぶやくと、咲耶が私の右腕をとり、体を絡めてくる。ほぼ、それと同時に春歌が私の左側につく。
「アリバイには事欠かないな。」

学校にいる間を除けば、ほとんど妹たちと一緒にいる。アリバイのない時間を探す方が難しい。

「でも、四葉たちは、兄ちゃまの身内デスから。四葉たちの証言は、アリバイになりません。」
たしかに・・・となると、逆にアリバイは全くなくなる。我ながら偏った人間関係である。

「その点は問題ないでしょう。兄やさまが、皆様にアリバイ工作を依頼したとして・・・
 その理由がノゾキ・・・ということはないでしょうし。」

んなことが発覚すれば、即 死あるのみってとこか・・・
そうかんがえると、私の左右を固めている咲耶と春歌が、死刑執行人のように思えてくる。

「では、四葉様、兄やさまの身辺調査。よろしくお願いいたします。」
「ハイッッ、名探偵四葉におまかせデス。」
ノゾキの容疑者の身辺調査は、どちらかというと興信所の仕事のような気がするが・・・まぁ、いいか。

「それでは、表に車を待たせておりますので、わたくしはこの辺で・・・
 あと、リビングの掃除は、火曜日の朝、一番に行いますので、そのままにしておいてください。」
「・・・お心遣い、感謝します。」


「あにぃ、マリアちゃんのこと、ばれなかったみたいだね。」
明るく声をかけてくる衛に、右手をぱたぱたと振りながらこたえる。

「いや、気づかれていたよ。まぁ、リビングになにかを隠している・・・くらいなんだろうけれども・・・
 その上で、火曜日の朝までは、ないしょのひみつにしてくれるそうだ。」
その場にいる妹たちは あちゃー という顔をする。

「でも、お兄様がノゾキ魔だなんて・・・」
「まぁ、彼女も私を疑っているわけではない。
 どちらかというと、濡れ衣を晴らすために、アリバイのある生活をするようにアドバイスをくれたようなものだ。」
「で、四葉が兄チャマのアリバイ担当デス。」
四葉がうれしそうにデジカメとルーペをちらつかせる。
自分の指の中から、残り少ない"プライベート"という砂粒が、すべて、零れていく気がする・・・

「そうじゃなくって・・・私というものがありながら、他の女のところにお兄様が行ったと思われるのが、屈辱なのよ。」
と、咲耶が、あたまのうしろで両腕を組み、自慢のプロポーションを誇示する。
今は、マリアの世話のため、タンクトップにロングパンツという格好なので、さらにボディラインがはっきりする。
何人かは、自分の胸元を見下ろし、恨めしげに・・・なぜか私のほうを見る。どうしろというんだ?

「ええと、千影、雛子、花穂に・・・鈴凛も今は休んでいるんだったな。」
「はい、特に千影さんは、マリアちゃんが私たちになついてくれるまで、ほとんど眠らずに世話をしていましたから・・・」
「できれば朝まで眠らせておいた方が、いいか・・・」
「はい、兄上様。」
鞠絵は、周りの者の体調不良にいち早く気づく。これで、自分の体調不良を隠さなければ・・・とおもうのだが・・・

「よし、千影がおきてくるまでは、私がマリアの面倒を見る。みんな、交代で休んでくれ。
 くれぐれも、体を壊してくれるな。」





「兄くん………代わろうか………」
「んん、ちかげ・・・もう・・・あさか・・・」

窓から、明るい朝の陽射しが射し込んでいる。

「ん、もういいのか。千影・・・」
「ああ、ゆっくりと………休ませてもらったからね………。
 春歌くんも、おきていてくれた………みたいだね………。」

隣のソファーで、うたた寝をしている春歌を見ながら千影が言う。
ああ、そうだ、昨日の夜のことを話さなくては・・・マリアを今日1日しかここに置いておけないことを・・・
千影のことだから、聞き分けてはくれるのだろうけれども・・・

「兄くん・・・窓の外に・・・なにか・・・いるよ・・・」

! 窓のそとにちらちらと紅い人影・・・確かに・・・誰か・・・いるのか・・・紅い???まさか・・・な
昨日、亞里亞のところのメイド長さんの言っていた・・・ノゾキ魔??

相手に気取られないようにマリアを千影に預け、春歌の肩を軽くトントンとたたき、起こす。
「春歌、静かに。窓の外に、誰かいる。」
視線で、窓を示す。ちらちらと見える紅い・・・髪?

「兄君さま、あれは・・・昨晩の話にあった・・・」
「??? 昨晩の話??」

千影は、あの時休んでいたからわからないのは無理もない。

「話は、あと。千影、マリアを頼む。 私が窓から直接目標を挟撃する。
 春歌は・・・ここからなら、勝手口がいいな。そちらから、援護してくれ。」
「兄君さま、咲耶さんたちにも援護をお願いした方がよくないでしょうか。」
「今から起こしていたのでは、相手に気取られる。カードは?」

春歌は、懐から、カードホルダーを取り出す。
千影は、自分の左腰を視線で示す。
私もテーブルの上に置いてある自分のカードホルダーを自分の右腰にマウントする。

「春歌、それは、真剣の長刀を転送するカードだろう・・・
 マリアの側で、流血沙汰は避けたい。木刀のものにしてくれ。10数えたら・・・いくぞ!!」


「・・・8・9・10!!仕掛ける!!」
窓から外へと躍り出る!!そこにいたのは・・・私とおなじ紅い髪をした、色白で、華奢な青年。
なるほど!!例のノゾキか!!ここなら、ノゾク相手はよりどりみどりか・・・、しかし!!

「物の怪と変質者は!!夜に出るものだろうが!!」

右手に持ったカードに力を込める。カードが輝き、中から2本の木刀が現れる。

「それを!!朝っぱらから!!たまんないね!!」

ノゾキ魔は弾かれた様に私と反対向きに走り出す!!
ほう、普通、人の右手がいきなりひかり、中から武器が出てくれば、驚くし・・・
そのあと、気迫で圧せば大体動けなくなるものだが・・・たいしたものだ。だが、逃げた先、勝手口には!!

「春歌!!いったぞ!!」

勝手口から、春歌が躍り出る。彼女の右手が輝き、長刀が出現する。

「さあ!!兄君さまにノゾキの罪をなすりつける輩は!!
 ワタクシがゆるしません!! 成敗して差し上げます!! 其処におなおりなさい!!」

ととと、と声が聞こえてきそうな急ブレーキをかけたノゾキ魔は、私と春歌、屋敷の壁に四方向のうち三方向をふさがれ、当然、開いたほうへと逃げる。
それも計算のうち!!左手の木刀を捨て、新しいカードを取り出す。左手に、棒手裏剣の感触・・・このまま影縛り・・・

と、ノゾキ魔の逃げた先に・・・可憐と雛子!!朝の散歩にでも、でていたのか?

まずい、手裏剣を投げるわけには・・・加えて、二人とも事情を知らない!!
ノゾキ魔が雛子の脇をすり抜けようとした瞬間・・・

「ごぶぅうううぅ」

がっくりと倒れてしまった。
ノゾキ魔の影からヒョッコリ顔を出し、小さな右手を引き抜きつつ、

「おにいたま、ヒナ、おにいたまに おしえてもらったとおりにできたよ。 ヒナ、えらい?」

・・・以前から、対変質者用に仕込んでいた雛子の全体重を乗せた一撃がノゾキ魔の鳩尾に決まったようだ。
我ながらよく仕込んだものだ。しかし、釘も刺しておかなくては・・・

「ああ、えらいよ・・・でも・・・」
「あいてのひとが、ひとりのときしか つかっちゃだめなんだよね おにいたま!!くしししし」
「はい、よくできました。おにいたまとの約束、絶対破ってはいけませんよ。」
「はーい、おにいたま!!」

雛子の頭をなでてやる。

雛子の体では、全体重といっても、たかがしれている。相手のガードが完全に下がった状態でなければ無効だろう。
少しでも、相手に警戒されては意味がない。そのため、

"相手が一人のとき"に"しらない大人が勢いよく突っ込んできたら"

という条件を付けておいたのだ。



「で、このノゾキ・・・???!!!」
ノゾキ魔の紅い髪の下から・・・なにかがはみ出ている。
紅い髪を引っ張ってみると、ぽろっとはずれ、下から、シニョンにまとめられた紫色の髪があらわれる。
仰向けにひっくり返すと、

「う、ううん」

あ、気がついた・・・開かれた瞳は・・・
吸い込まれそうな・・・漆黒の瞳・・・?
千影は・・・紫の瞳・・・だよな・・・???
中性的な顔立ち、のどぼとけ・・・??

のどぼとけ?

考え中・・・
「兄くん………終わったようだね………」
考え中・・・
「??この人は………私に………マリアちゃんを預けた………女の人………だね………」
考え中・・・

ぽん、と手を打つ。

「マリアのお父さんですね。」
「ぱーぱ、ぱーぱ」
気がつくと、後ろには、はしゃぐマリアを抱いた千影が、目を白黒させていた。



「おう、復活したか・・・千影パパ」
「つっ………いじわるだね、兄くんママ………」
「はっはっはっ、めらっさ、めらっさ」
わけのわからない返しをする。
マリアパパを家まで運ぶ際、あまりにふらふらと歩く千影を見かね、可憐がマリアを抱いて帰ってきた。
まぁ、ママのつもりでこの2日間マリアの面倒を見てきたのに、実は、マリアの方はパパのつもりで千影を見ていた・・・となれば・・・ショックもあるだろう。
と、なると、当然、私は、マリアにママとして見られてたわけだが・・・
千影の惚けた顔など、なかなか見られるものではない。仮にグランマ呼ばわりされても、代価としては安いものだ。

さて、千影がわれに返ったところで、妹たちが全員そろったことになる。

さてと・・・

「で、マリアをなぜ捨てた。」
「!!!別にマリアを捨てたわけでは・・・」

マリアパパに向き直り、単刀直入に聞く。妹たちもそこの所は聞きたかったはずだ。
ちょっと人聞きの悪い言い方だが、こういったとき私は、こういう言葉を選んで使う。
相手の反応から、真意を探るためだ。
さて、どうでてくるかな・・・

「まずは、この写真を見てください。」
一枚の写真を取り出す。その写真は、ぱっと見、マリアを抱く私と、その横にたたずむ千影の写真に見える。

「えと、こちらが?」

写真の中の自分・・・ではなく・・・おそらく・・・
「はい、亡き妻のエヴァです。」

うあ、改めて、写真で確認すると・・・効きますねぇ・・・

「フフフ………兄くん………」
ああ、私が悪かったよ・・・千影、恨めしげに目をやる。勝ち誇った笑みがなんかむかつく・・・

「あの・・・続けてよろしいでしょうか?」
「あ、どうぞ」
「はい。私と、エヴァの結婚は、エヴァの両親に反対されてまして・・・ 駆け落ち同然に結婚しました。」

うあ、なんか、咲耶、春歌、鞠絵、可憐が夢見る少女になっている。そんなにいいものかなぁ。駆け落ちって・・・

「すぐに、マリアも生まれ、私たちは幸せでした。
 ですが、その幸せも長くは続きませんでした。
 マリアと一緒に買い物に出ていたエヴァは、スピードを出しすぎたトラックにはねられ・・・」

涙ぐむ一同。事故死・・・だったのか・・・マリアの母親は・・・

「その後、エヴァの両親がやってきて、一人娘、エヴァの娘であるマリアを連れて行きました。
 私は、エヴァを失った悲しみから、無気力になり。それを容認してしまいました。
 しかし、時間がたち、冷静になってみると、 エヴァの残してくれたマリアを、悪魔の手に渡してしまったことに気がつきました。」

いや、マリアの祖父母をつかまえて、悪魔というのはあんまり・・・でもないらしい。
妹たちは、こぶしを握り締め、うんうんとうなずいている。この手の話は、引き込んだもの勝ちということか・・・

「正面からマリアを返してくれるように、エヴァの両親にたのみました。
 ですが、敬虔なクリスチャンでもあるエヴァの両親は、この子は、キャベツ畑から生まれたんだと、信じて疑いませんでした。」

って、どうやって子供をつくったんでしょうね、マリアの祖父母殿は。
とんとん? 雛子が私の服の裾をひっぱる。
「おにいたま、赤ちゃんは、キャベツからうまれてくるの?」

・・・いきなり、あかちゃんはどこから来るの、か。まさか、おしべとめしべが・・・というわけにもいかないし・・・

「雛子くん………あかちゃんはね、キャベツの葉に包まれていて、その中からうまれてくるんだよ………」
千影が、キャベツの大きさを示すように手で、宙に丸を描き、キャベツの葉をむしる動作をする。
それをみて、雛子は、白雪の方に向き直り、
「白雪ねえたまは、キャベツを切るとき気をつけないといけないね。
 だって、えいってキャベツを切ったら、中に、赤ちゃんがいたら。たいへんだもんね。」

"白雪特製 キャベツのザク切りトマトジュース掛け(注:ひとはだ)"

怖い考えになってしまった・・・
当の白雪は、自分の右手、雛子、マリアの間を視線をくるくると三度ほど回し、ぶんぶんと首を左右に振る。
あ、中身の(あかんぼうの)入ったキャベツに包丁を入れてしまった場合の感触を想像したな・・・白雪・・・

「兄や・・・あかちゃん・・・かわいそうです。くすん・・・」
この場に居る全員が怖い考えになってしまったらしい・・・

「だいじょうぶだよ、雛子。八百屋さんとかで、売っているキャベツは、中に赤ちゃんが居ないことを、農家の人が確認してくれているから・・・」
我ながら、うまい言い訳である。

「そうなんだ。よかったね。くしししし。おにいたまは ものしり♪ もっのしり♪ ものしり♪・・・」
雛子が歌いだす。この歌のおかげか、まわりから肩の力が抜ける気配がする。怖い考えから抜け出したらしい。

「あの、話を戻してよろしいでしょうか・・・」
「あ、どうぞ・・・」
これだけ個性的なメンツがそろうと話の腰が折れるのはよくあることなのだが、初めての人には、つらいだろうな・・・

マリアの父親は話を続ける。
「結局、話をまとめることができなかった私は、マリアを連れ出してしまいました。」

それって・・・誘拐・・・

「ですが、エヴァの家は、かなり裕福な家庭で・・・すぐに追っ手を差し向けられました・・・」

金持ちって連中は・・・ここも人のことは言えんか・・・

「追っ手を撒くためにも、マリアを誰かに預ける必要があったのですが、
 私の友人は既にマーク済み、それ上にマリアは人見知りが激しく、私たち夫婦以外には まず なつきませんでした。」

ああ、確かに。
周りの妹たちもうなずく。

「そこで、お見かけしたのが お二人でした。」

私と千影をみる。

「私たちと、瓜二つの容姿。かつての私たち夫婦のように仲睦まじい様子、この方達ならばと・・・」

「朝靄にまぎれて、徹夜明けで、ボーっとしているの千影にマリアを押し付けていった・・・と」

私のつっこみに、押し付けた方も、押し付けられた方も照れる。
瞳の色こそ違え、よく似た風貌の二人が同時に照れるのをみると、妙な感覚を覚える。双恋・・・では、ないのだが・・・

「しかし、どうしたものかな・・・ マリアの祖父が、裕福な家庭なら・・・
 そちらに育ててもらった方が、マリアの幸せなのかもしれないが・・・」
と、つぶやく私に・・・

・・・ギロリ・・・

12組の視線が痛い・・・

「わっ、わかっている。 ・・・ふぅ・・・そういうものでもない・・・という点では、
 私たち13人の意見は一致か・・・
 しかし・・・一旦、親権をわたしてしまったとなると・・・めんどうだな・・・」

「フフフ………相手がクリスチャンなら………いい方法が………あるよ………」


でもって、1週間後・・・


ぱたぱた
「いやー、助かりました。エヴァの両親も、この娘のことをあきらめてくれました。」
ぴょこぴょこ
「これで、親子二人、平穏に暮らしていけます。」
ふりふり

今、マリアは、父親の腕に抱かれていない。
かといって、私や千影、妹たちに抱かれているわけでもない。

ベビー服から出た、こうもりのような羽根。          ぱたぱた。
ぴんと とがった耳。                      ぴょこぴょこ
オムツからはみ出た黒い矢印を思わせる、しっぽ。    ふりふり

いわゆる、悪魔っ子スタイルで私たちの前にパタパタと浮くマリア。
咲耶や、千影がこのスタイルならば、その手のお兄さんが大喜びしそうなのだが、
あかんぼうのマリアがしていると・・・どうも、シャレにならない。
クリスチャンではない、私ですらこうなのだ。
ヨーロッパ育ちの春歌、四葉、亞里亞は完璧に退いている。

当然、敬虔なクリスチャンである、マリアの祖父母は、悪魔っ子と化したマリアをすぐさま手放したらしい。
しかし・・・人類すべての母たる、エヴァの名を持つものを母とし、
聖母の名を冠したマリアが・・・悪魔っ子・・・別に、悪魔を憑依させたわけでも、契約させたわけでもないのだが・・・

ほかに手がなかったとはいえ・・・千影も結構とんでもない手をつかってくれる。

マリアの父親がこういったことにどうじない性格だったのは、ある意味、幸いした。
「ありがとうございます。このご恩は一生忘れません。
 それと・・・
 お兄さん、車には、くれぐれも気をつけてくださいね。」

「・・・・・まて、縁起でもない・・・・・」
複雑な心境である。


「ああ、こら、マリア、飛ぶんじゃない。
 さあ、いい子にして、さあ、パパと帰ろう。新しい家に・・・」

そんな会話を交わしつつ、
父親が新しく借りたアパートに帰っていくマリア親子・・・
マリアの姿も、あと、3、4日もすれば元に戻る。
そして、私たちも元の平穏な日常に戻る・・・か。

もうすこし、妹たちが・・・いや、私もか・・・マリアとの別れがつらくなるかと思ったんだが・・・

あんな笑顔を見せられてはな・・やはり、実の父親には勝てないか・・・

ま、ようやく、肩の荷が降り・・・ん?
肩を回そうと、腕を持ち上げようとすると・・・腕が、おもい???

「兄や・・・亞里亞、まだ、ちいさいです。」
「おにいたま、ヒナ、サビシイサビシイ病なの。」
両手に亞里亞、雛子がぶら下がっている。
「お兄様、ここ数日、マリアちゃんに独占されていた分、
 しーっかり、とりかえしますからね!!」
咲耶の言葉に、他の妹たちも、ウンウンと、うなずく。

訂正。肩の荷はまだ降りず。日常は、平穏にあらず・・・というところか。
そのまま、亞里亞と雛子の手を引き、咲耶たちのほうへ歩き出したため、千影の独り言をききのがしてしまった。



兄くんとは………今までにも何度も………兄妹として生れ落ちてきて………
夫婦として………契ってきたけれども………
ただの一度も………子供には………恵まれなかったよ………
だから………マリアくんが………居てくれた数日は………とても………しあわせだったよ………

兄くんは………これで………平穏が………
戻ってくると………思っているようだけれども………
まだまだだよ………まだまだここで………とてもいいことが起こるんだ………。
だからおとなしくイイ子にして………待っておいで………ね………



あとがき

どうも、James Bartonと申します。
頭で物語を考えることはあっても、
実際に文章にするのは初めてです。
に、しては、あかんぼうなんて、厄介なものを題材にしてます。

文章を作ること自体、ほとんど経験がなかったので、
目標なんてものは、立てようがなかったんですが、
一気に、読んでしまえるSSを目指して書いてみたつもりです。
うそつけ、ここ読みにくかったぞ。なんて感想をいただければ幸いです。

なお、このSSのなかで、どっかで見たことあるなぁ
と、いう部分を見つけた方・・・あたりです。
オフィシャルからパクリました。
はい、3ヶ所です。どこが、どれをパクッたかわかった方に豪華商品・・・ではないのですが・・・

感想を頂いた方に、書いたには書いたけれども、蛇足かなと思って、
削ってしまった部分を送らせていただきます。


James Bartonさんへの感想はこちら
nmr_ssm@yahoo.co.jp
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