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「チュン・・・チュン・・・・・チュン・・・・・」
んん、もう朝か・・・

あれから、夜中の2時ごろにマリアが泣き出し、千影と2人で、外に連れ出したりなんだりと、何とか泣き止ませ、寝なおしたのが、3時過ぎ・・・
あんまり、寝た気がしない・・・
「おはよう、お兄様。」
「おはようございます。兄君さま。」
目を開けると、咲耶と春歌が、微妙に硬い笑顔で私を覗き込んでいる。

「ん?おひゃよう、ひゃくや、ひゃるか・・・??」

2人は、ベッドの上に乗り、私の口にゆびをいれ、咲耶が左に、春歌が右に、私のほっぺたを、びろーーーんと引っ張っている。

「にゃんにょてゅも・・・」
2人の指を引っこ抜き、
「何のつもりだ、咲耶、春歌。」

「いーえ、朝食の準備が整いましたので、兄君さまをおよびしに来ただけですわ。ねぇ、咲耶さん。」
「ええ、そうよねぇ、春歌ちゃん。」

と、ドアの方へと歩いていく2人・・・珍しいな、この2人が仲良く つるむなんて・・・


「もう、兄君さまってばぁ。」
「ほんと、千影にばっかり・・・」

???もしかして2人とも怒ってる? ああ、そうか・・・

「すまなかった。」
咲耶、春歌が、「えっ」と振り返る。

「夜中にマリアが泣き出して、眠れなかったのを怒っているのだろう?
 私と千影も、なんとかマリアを泣き止まそうと・・・」

2人は、「ふぅ」とため息をつき・・・

「もう、お兄様ってば・・・」
「ワタクシたち、そんなことでは怒りません」

「???」
「フフフ………2人が怒っているのは……… そんなことでは………ないんだよ………
 時々、兄くんは………とてつもなく………にぶくなるね………
 ま、そんなところも………かわいいんだけれどもね………」

「???ちょっと待て、千影、それはどういう・・・」
意味か・・・と聞こうとする前に、咲耶、春歌に続き、マリアを抱き、千影までが部屋から出て行ってしまった。

「はて?」
後ろ頭をぽりぽり掻きつつ見送る。

さて、今日は、マリアが来て・・・2日目か・・・


私と妹たちの子育て日記 2nd Day

作者 James Barton さん


「いないいない・・・ばぁ、くしししし、マリアちゃん、いないいない・・・ばぁ」
「くすん。亞里亞もやります。マリアちゃん、いないいない・・・ばぁです。」

昼食後、リビングでは、鞠絵がマリアを抱いてソファーに座り、その両脇で、雛子と亞里亞がマリアをあやしていた。
落ち着いた雰囲気をもつ鞠絵が、マリア、雛子、亞里亞、そして、ミカエルをつれていると、
母親が、3人の子供の世話をしている、そんな一枚絵を見ている気がしてくる。

「兄上様・・・」
鞠絵が私に気づき、呼びかける。
「あ、おにいたま、くしししし、
 ひなこ、もう、まりあちゃんのおねえたまなんだよ。くしししし。」
「亞里亞も、マリアちゃんの姉やです・・・くすっ。」

「ああ、ふたりとも、これからも、マリアをたのむよ・・・」
と、2人の頭をなでる。2人ともくすぐったそうに、そしてうれしそうに笑う。

「兄上様・・・」
鞠絵と目が合う。
「・・・・」

「ふふふ、アテン○は、兄上様が、昨日、焼いてしまわれたじゃないですか。」
「ああ、そうなんだが・・・」

昨日、危うく、あかちゃんプレイに雪崩れ込みかけたのだが、よく考えてみれば、あれは、私に哺乳瓶でミルクを飲ませる策略だった。
オムツをあてる。という、まぁ、より私が嫌がるものをちらつかせることで、哺乳瓶でミルクを飲むことを、まだマシと思わせるものだった。

ま、見事にひっかかったことになる・・・

ただ、あのあと、うっかり
「何なら、おまえたちにオムツをあててやろうか・・・」
とつぶやいたため・・・結構派手な騒ぎになった。

アテ○トは、すぐさま焼き捨てた・・・


「はーい、雛子ちゃん、亞里亞ちゃん、ミルクの準備ができましたの。 取りに来てくださいですの。」
白雪が、キッチンから声をかける。
「はーい、ヒナがマリアちゃんのミルクをあげるのー。」
「あ、亞里亞も、ミルク・・・あげたいです。」
2人とも、キッチンへトテトテと走っていく。

「2人とも、すっかりマリアのお姉さんだな。」
鞠絵の隣に腰掛ける。
「ええ」

「ふたりとも、まだちいさくて・・・人に面倒を診てもらうばかりだったからな、
 自分よりちいさな・・・妹ができたのが嬉しくてしょうがないんだろう。私も、家では、末っ子だったからよくわかる・・・」
「あの子達だけではありません。」

珍しく、鞠絵が口調を強くして言う。
その口調に驚いたマリアをなだめるため、鞠絵が、手のひらをマリアの顔の前をヒラヒラとさせる。
マリアがそれを目で追い、落ち着くのを待って、鞠絵が言葉を続ける。

「わたくしは、ずっと、病院と療養所で暮らしていましたから・・・
 人に世話をしていただくばかりで・・・誰かの世話をすることなんて・・・
 ミカエルを洗ってあげるくらいしかできませんでした。」

「くうーん」
ミカエルが鞠絵の声に反応して、頭を上げる。

「兄上様にお見舞いに来ていただくたびに……思ってたんです……
 いつか必ず、わたくしもみんなのように元気になって、
 元気で明るい世話焼きな妹になって……
 少しでも兄上様のお役に立てるような……
 そんな妹になりたくて………ですから、少しでも誰かのお役に立てる、今の生活が、うれしいんです。」

なんとなく、鞠絵が病院から療養所に移されて、初めて見舞いに行ったときの事を思い出す。

窓からの、やさしいひかりを浴びながら、ベッドにたたずむ彼女は、なにか儚げで、
少し目をそらすと、肩に羽織ったカーディガンを残し、消えてしまいそうな・・・そんな感じがした。

それ以来、半日時間ができると、鞠絵の見舞いに行っていた。
すこしでも、鞠絵をほおっておくと・・・
消えていなくなってしまう気がしたから・・・

さまざまなところからブーイングがあったのだが・・・

そんな鞠絵も、私達といっしょに暮らすようになると、可憐や、春歌といっしょになって、私の世話を焼くようになり、雛子や、亞里亞の面倒も、見てくれている。

元気になってくれた・・・程度にしか考えていなかったけれど・・・
鞠絵が、こんなことを考えていたなんて・・・

ついつい・・・
ん??
「おにいたま♪ほら、マリアちゃんのミルク!!」

私の袖口をひっぱり、哺乳瓶を差し出す雛子。

「ヒナが、あげていーい?」

私は、大きく頷くと、雛子をひざの上に乗せる。

「はい、マリアちゃん、ミルクですよ。」
鞠絵がマリアを、雛子がミルクを飲ませやすいように抱きなおす。

「はーい、マリアちゃん、ミルクですよー」
「んー、むく、あむあむあむ・・・」

おいしそうにミルクを飲むマリア・・・
千影と私にしか、なつかなかった子が、たった2日でよくもまぁ・・・

「むう、マリアちゃまにミルクをあげている、
 兄チャマ、鞠絵チャマ、雛子チャマ、チェキです!!」

ピッと、デジカメの電子音がする。
ずいぶん久しぶりにチェキされた気がするのだが・・・
いや、マリアが来てからだから、まだ丸1日・・・チェキされてないだけ・・・
私は中毒症か??チェキの・・・??

「むう、四葉もマリアちゃんにミルクをあげたいデス。」
「と、いうより。お兄様とのラブラブ子育ての写真がほしいわね。 私としては・・・」
「あの、可憐も、そんなお兄ちゃんとの写真・・・ほしいです。」
「あーん、私も・・・」

「おいおい、そんなにやかましくすると・・・マリアが泣き出すぞ・・・少し落ち着け・・・
 すぐにマリアがいなくなってしまうわけでなし・・・」
と、ここまで口にして、妹たちの奇妙な視線に気づく・・・

「あ、今日明日までなんだな・・・マリアがここにいるのは・・・」

まずいな・・・これは・・・

「兄くん………できれば………マリアくんを……… このまま………ここに………」

「千影・・・無理を言ってくれるな・・・」

いつも・・・甘い誘惑で、惑わせてくれるな・・・千影は・・・
しかし・・・参ったな・・・





「ふう、やっと眠ってくれたか・・・」
マリアを寝かしつけ、一息。もう日曜日の夜である。
「お兄様、おつかれさま。」
「あにぃ、だいじょうぶ?」
「まぁ、なんとかな。」
と、右肩をぐるぐるとまわす。
父にはしごかれていたし、ここに預けられている理由のひとつが、武術の鍛錬なので、ばっちり、しごかれ、かなり鍛えられているつもりだったが、
それでも子守りは勝手が違うらしい。体がみしみしと軋みをあげる。

で、いまマリアの面倒を私と一緒に観てくれて居るのが咲耶、衛と・・・
「兄君さま、紅茶が入りました。砂糖とミルクは入れてよろしかったですね。」
春歌である。
「ああ、たのむ。」
普段は砂糖もミルクも入れないのだが、疲れているときは別。
「はい。衛ちゃんも」
マリアに指をつかまれたまま、カップを受け取る衛。
「衛。マリアの上にこぼすなよ。」
「わかってるよ、あにぃ。」
と、受け取ったカップをマリアからできるだけ離し、
そのカップに口を持っていくようにして飲むため、衛の姿勢が不自然な形になる。
「そういえば・・・おまえたちは、小さな子の面倒をみたことはなかったのか?
 小さいころの雛子とか・・・」
「ううん、ないよ。あにぃが来るまでほとんど家同士のつきあいなんてなかったし・・・だから、家では、まわりは使用人ばかりで、おもしろくなかったんだ。」

彼女たちの一族は、いわゆる財界のトップで、両親はなにかの会社の社長やら、専務やらをしていて、日本中、あるいは世界中をとびまわっている。
彼女たちは、両親にかまってほしかったのかもしれない。
事実、彼女たちの趣味と両親の仕事には、関係の深いものがある。
衛の両親はスポーツ用品の会社を任されているし、咲耶の父はアクセサリーのデザイナーだったりする。

「ワタクシは、半年まえまでドイツにいましたから・・・」

春歌、四葉、亞里亞の帰国にあわせて、この家を用意した感があるからなぁ。
"くそばばあ"、あ、いや、咲耶のお母さんは・・・

「ま、私も妹や弟はいなかったからなぁ・・・」

「むぅ」
咲耶が右のほっぺたを引っ張る。

「わるかった、今は、12人の妹が、いるんだな。私には・・・」

「かわいい・・・は?お兄様?」

「はいはい、12人のかわいい妹が、だな。おまえも、13人目の私の妹になってくれるか?マリア。」

「お兄様!!」
「あにぃ!!」
「兄君さま!」

「わかっている。多分この子の母親は迎えに来る。
 千影が一緒に持たされた荷物はたっぷりあと2日分はある。
 この子の母親がこの子にどれだけ愛情をもっているかの あらわれだと思う。
 この子を迎えに来ない・・・ということは ないと思う。」

ここまで言うと、衛が寂しそうな顔をする。
この子の両親は特に忙しく、この子との時間をほとんど もてなかったと聞いている。
むしろ、自分の方が捨て子のように感じているのかもしれない。

「衛、"あにぃ"が一緒では、不満か?」
「!!  #$%」('NJDHNWESHあはwhy)」

衛が顔を真っ赤にして慌てるこういうところが かわいいんだよなぁ
思わず、衛を抱き寄せる。

「むぅ、お兄様!!」
「あ、あの 兄君さま」

咲耶、春歌が”衛ばっかり・・・”といった不満の声を上げる。こういうところが、かわいいんだよなぁ
思わず、あいている右腕で、咲耶、春歌を抱き寄せる。

『カチャ』

今いるリビングから、エントランスへと続くドアが開く。
ドアを開けた本人は2,3秒ほど、うらやましそうな顔をして・・・
「お兄ちゃん、たいへんなの!」
トテトテトテ
「兄や、じいやが来たの・・・」

まわりを見渡す・・・散らかってるなぁ、マリアの荷物が・・・

「これは・・・マズイカモシレナイ・・・」



あとがき

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
ちょうど、この中編が、"起承転結"の"承"の部分に当たります。
(いや、前中後編なら普通そうだって・・・)
よろしければ、このまま後編まで、お付き合いいただければと思います。

ときに・・・アテ○トって成人用オムツ・・・
ありましたよねぇ?
昔見た時代劇で、CMを、やってたと思うんですけど・・・

 


James Bartonさんへの感想はこちら
nmr_ssm@yahoo.co.jp
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