それはある夜のことだった｡

「･････････あ〜ん･･････
　全然眠れないよぉ･････｡
　明日は朝からチアの練習あるのにぃ････｡」

花穂はなかなか寝付けない様子だった｡
暑くて寝苦しいのだろうか｡

「あ､そうだ･･･････｡
　こういう時は羊さんを数えれば良いって
　お兄ちゃまが言ってたよね･･･････｡
　ちょっとやってみよ･･･････････｡」

花穂は目を閉じて羊を数えることにした｡

「（羊が一匹･････羊が二匹･････）」

花穂のイメージからは
どう見えているかというと
羊が一匹ずつ牧場の柵を
跳び越えているのが見えている｡

「（羊が三匹･･･羊が四匹･･･羊が五匹･･･
　羊が六匹･･羊が七匹･･羊が八匹･羊が九匹
　十､十一十二十三十四十五十六十七････！！！！！）
　なんかいっぱい出てきたーーー！！！
　限度があるよぉ！！」

花穂の脳内ビジョンには羊が大量に
やってきたのが見えていた様子だった｡

「もう､花穂ったら何考えてるんだろう？
　ちゃんと数えて寝よ･･･････｡」

花穂は再び目を閉じた｡

「（羊が一匹･･･羊が二匹･････
　羊が三匹････羊がよんひ･･･【ガンっ！！】）
　ちゃんと跳んでよーーーーー！！」

花穂の脳内ビジョンには
羊が柵にぶち当たるのが見えたようであった｡

「もうわけ分からないよぉ････｡
　ちゃんと寝よ･･･････｡」

そしてまた数え始める｡

「（羊が一匹････羊が二匹･･････
　羊が三匹････三匹全部逃げました･･････）
　逃げちゃだめだよ､羊さーーん！！」

花穂の脳内ビジョンには
羊が全員逃げたところが見えたようだ｡

「変なこと考えちゃだめ！！
　寝る寝る･････！！！」

また数え始める｡

「（羊が一匹････羊が二匹･･････
　羊が三匹･････羊が四匹･･･････
　････････････････････････････
　もう羊がいっぱいで入り切りません｡）
　牧場が狭いよーー！！！もっと大きいの！！」

異常に小さい牧場だったようである｡

「寝なきゃ寝なきゃ･････｡」

また数える｡

「（･････執事が一匹････）
　名前似てるけど違うって！！
　しかも今のじいやさん！？」

今度は間違ってはいけない物を
間違えて見てしまったようである｡

「うー････イライラするぅ･････｡
　ちゃんと数えないと･････｡」

目を閉じる｡

「（羊が一匹････羊が二匹･････
　羊の背筋が伸びました･････）
　気持ち悪いよーーーー！！」

今度は考えちゃいけないことを
想像してしまったようである｡

「やり直しやり直し！！！
　（おすぎが一匹･････）
　気持ち悪いよーーーーー！！」

またやってしまったようである｡
そしてまた数え始める｡

「（羊が一匹････羊が二匹･････
　羊が三匹････羊が四匹･･････
　羊が五匹････羊が六匹･････････
　さぁ､羊が全員ゲートインしました！
　さぁスタートです！！！！
　おっと4番が優勢か！？しかし6番も追い上げる！
　勝つのはどっちだ！？どっちだーーー！！？？）
　･･････････興奮して寝れないよーーーー！！！」

何故か競馬（競羊）の映像になっていた｡

「あ､でもなんか眠たくなってきた････｡
　ようし･･･今度こそ･･････｡
　（羊が一匹････羊が二匹････羊が三匹････
　羊が四匹･･･････羊が五匹･････････････｡」

数える間隔が長くなってきた｡
どんどん眠くなってきているのである｡

「（羊が六匹･････････羊が七匹･･････････
　羊が八匹･････････････････････････････
　羊が････九匹･････････････････････････
　ひつ･･･じが･･････････････････････････
　･････････････････････････････････････
　･･････････････････【メェ〜〜〜！！！】）
　何起こしてるのーーーーーーーー！！？？」

完全に寝た･･････と思ったら羊が鳴いて
花穂を起こしてしまったのであった｡

「折角眠りかけてたのにぃ･･････｡
　なんか僕も数えろって起こされた･･･｡
　今度こそ気合い入れて寝る！！
　何があっても起きない！！」

今度は本気で寝る気である｡

「（羊が一匹､羊が二匹･････
　ひじきは食べたくない･･･････････）」

ひじきが脳をよぎったが花穂は無視した｡

「（羊が三匹････羊が四匹･････････
　羊だと思ったらカリフラワー････････
　羊が五匹････五匹そろってハイジが来たよ･･････
　羊が六匹････羊が七匹････････
　羊が八匹･･羊が九匹･･･羊が十匹･････
　十匹たまって､クララが立った！！）
　わけ分かんないよーーー！！！！
　なんでクララやハイジが出るのーーーー！！？？」

何故この古い時代のアニメを知っているか知らないが
そういうシーンが花穂ビジョンに浮かんだ｡

「もう次で絶対に寝る！！！」

ちょっと怒りの感情も混ざっていた｡

「（羊が一匹･･･羊が二匹･･･････
　羊が三匹♪････羊が四匹♪♪････羊が五匹！！♪♪
　羊が､羊が､羊が六匹！！チェケラ♪）」

花穂ビジョンには羊がHIPHOP調になって
柵を跳び越えている羊たちが見えていた｡
しかし花穂も意地になっていたのでツッコもうとしなかった｡

「（YO♪YO♪羊たちがいっぱいがいたんだYO！
　とても可愛い羊たちだYO！
　俺の友達大抵羊だYO♪
　羊が､羊が､羊が7匹チェケラ♪）」

すると花穂ビジョンの画面が暗転し
HIPHOPのラッパーの格好をした
花穂が映った｡
ノリノリでラップを唄っていた｡

「（あいつもこいつも大阪生まれ♪
　HIPHOP育ち♪ウール100%フッサフッサ♪
　YO♪YO♪YO♪YO♪YO♪YO♪YO♪
　こんなことやってちゃ寝れないYO♪チェケラ！！）」
　寝れるかーーーーーーー！！！！！！！」

（終）

どうも､いつもここからです｡
これらは全て花穂の想像ということにしてます｡
････これじゃただの天然ですね･･････｡